氷雷の魔女の物語
物心が付いたころから少女は魔法使いに育てられていました。
町はずれの森の中にある小さな小さな家の中で、育てられました。
その魔法使いはとてもとても優しい人で、5歳の誕生日にはウサギのぬいぐるみを買ってくれました。
ある日、魔法使いは言いました。
「私はここを出ていく、これをやるから町に行って学校に入りなさい」
と、大量のお金を置いて、どこかに行ってしまいました。
家に取り残された少女はお金を持って町に行きました。そして、大きな図書館のある不思議な学校に入ったのです。
その図書館には自分と同じ魔法使いがいました。しかし、すぐに追い出されてしまいました。
学校に入った少女は様々なことを学びました。
しかしすぐに無意味だと知りました。
友達など出来ませんでした。生まれつき黄金色に輝くこの髪をみんな恐れて避けていったのです。
そこで初めて少女は自分は異質な存在だと気付きました。全ての少年少女がみな髪が黒かったからです。
先生からは親が海外育ちだったからではないかと言ったが私にはよく分かりませんでした。
最終的に少女は学校に来なくなりました。
それからしばらくのこと、家にある僅かに残された魔法本などを見つけてはそれを熟読するようになったのです。
昔から色んな魔法を見せてくれたあの魔法使いに憧れていて
、いつしか自分も魔法使いになることを夢見ていました。
それから数日、少女はとある一室で大量に敷き詰められた魔法本の下に地下に続く階段を見つけました。
すこし広く、薄暗い部屋で小さな蛍光灯があり、それを点けます。
そこにあったのは、
大量の本と
血と
バラバラになったいくつもの人間がいました。
実験室でした。
血の塊のようなものがたくさん床に散らばっていました。
いくつもの死体は腐敗が進み、骨が向き出ている物や白骨化した頭のない物までありました。
人がこんなにも芸術的に内臓や血をまき散らしている様子を、少女は初めて見ました。
あの魔法使いは人体実験をしていたのです。たくさんの本にはいろいろな魔法の発動方法や呪文が載っていました。そしてそれらすべてが、人体に影響を与える物ばかりだったのです。
少女はそれらをすべて読みました。
そしてあるものに目が付いたのです。
不死の魔術。
飲まず食わずでも生きていける。どんなにバラバラにされても髪の毛一本あれば瞬時に再生できる究極の魔法でした。
本に挟まれたメモによるとあの魔法使いさんはそれに成功したらしく、しかもそれは家を出ていく3日ほど前だったのです。
そして続きには。
”ついに完成したこれであいつを倒せる。さっそく出発の準備をしようと思う。《少女の名前》にはしばらく心配をかけてしまうが、あいつを倒せばまた幸せな家庭に戻れる、どうかあの子には、私がいなくても・・・・・・”
最後は血で濡れていてよく読めませんでした。
あいつとは何なのだろう。
それよりも少女は不死の魔法が気になって仕方がありませんでした。
少女はさっそく本の手順通りに進めていったのです・・・
不死の体を得るのは自身の魂を別の物に映すことで、魂のない肉体は、いわば抜け殻のようなものになり、魂が存在する限り、肉体はいくらでも再生するというものでした。
さっそく彼女は魂の置き場所を考えました。
ウサギのぬいぐるみを見つけました。これに決めてさっそく初めて見ました。
魔方陣を展開し、呪文を唱えた少女は
全てを失いました。
全身が焼けるように熱く、痛く。何度も何度も焼け焦げて死にました。その度に再生を繰り返し、その度に身体が焼けて崩れていったのです。
不死は成功しました。しかし体内に宿る魔力がまだ未熟な少女の身体は魂が抜けたと同時に、体温の調整を促す身体機能を失ってしまい、体温が急激に上がり続ける症状に陥ってしまったのです。
繰り返す痛みの中で少女は、再生してから焼け落ちるそれまでに、必死にそれを抑制させる魔法を探し続けました。
本を見つけて、死んで生き返り、本を開いて、死んで生き返り、本を読んで、死んで生き返り、また本を探して、死んで生き返りをくりかえしました。
いつしか少女は痛みを感じなくなりました。焦げる体に目もくれず、ひたすら本を読み続けました。
一か月の間、死と生を絶え間なく繰り返し、ようやくとある魔法にたどり着きました。
氷の魔術。
あやゆる物を凍らせ、砂漠一帯を一瞬にして極寒へと変えるもの。
これを使って彼女は体温を調節することに成功し、それから体が焼け落ちることがなくなりました。
しかし左目だけは再生されなくなってしまいました。
彼女の顔にはもう希望の光すら見えていませんでした。
さまざまなものを失いました。
そして少女は怒りを覚えたのです。
あの魔法使いを許さない・・・と
少女は、それからあらゆる魔術を研究し始めました。
いつしか帰ってくるあの魔法使いを倒すために。
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